【読み物】「一緒に行こう、明日に」(今井楓)

 頭の中を駆け巡る言葉は、今まで見て、読んで、聞いてきたものの繋ぎ合わせ。私だけの言葉なんてない。だけど組み合わせ方は自由で、ピタッとハマる言葉の連なりに出会えたとき、そういうときに、急に生きていることを実感する。自分にこんな感情があったんだ。

 浅井音楽『ぬいぐるみ投げてたら日曜日が終わった』(産業編集センター)のページをめくったとき、こんな本が、紙の束が、このマテリアルが作れることに羨ましく思った。

凹凸のある表紙、少し表紙が透ける黄色の帯、表と裏で色の違う見返し、観音開きのページ、ピンクのインクで直筆の文字が印刷されたトレーシングペーパー。だから紙の本が好きなんだよ、って言いたくなる。

 自分の言葉がこんなに手の込んだ一冊になるって、どんな気持ち? 私なら一緒に埋葬して欲しい。

 どんなに言葉を尽くしても、みんなに全部がちゃんと伝わるわけじゃない。そんなことはもうわかっているのに、やっぱり伝えたくなってしまって、遠回りを重ねて本題を見失った発言をしてしまう。脳みそをそのまま交換できたらいいんだけど、そうすると見られたくないことまで見られちゃうし、でも言いたいことはあるし、だけど伝えられない。だから私はいつだって自分のために書いて、自分のために読んでいる。それなのに。

 浅井音楽は、それを全部わかって、知っていて、短い言葉たちだけで本を書いちゃった。文章、と呼ぶには少し長さの足りない断片。ピタッとハマる連なりを見つけてはページを捲る手を止める。読み手に委ねられたその言葉は、浅井音楽の声で再生されながら、徐々に私の中に取り込まれていく。ニュートラルな音声で再生され始める。きっといつかこれは、私の言葉として再編集されていく。

「そっと寄り添ってくれる言葉たち」なんて紹介は似合わない。たしかに寄り添ってくれるかもしれない。救われる? もしかしたら。Googleドキュメントに閉じ込められていたこの言葉たちは、本になったことで浅井音楽の身体から離れ、私のものになってしまう。それくらい、馴染んでいく。

 ゴミめいたこの世界で、努力しちゃってごめん。ねぇねぇねぇ、最上級に可愛いの。この歌私のことを歌ってる。なのにみんな知らん顔して通り過ぎていくんだもん。意味わかんなくて、滅。あーあ、はいはい、もうわかりました。目を閉じたら終わってないかな。全部。でも明日になっちゃうんだろうな。特別嫌なことなんてないけど、めそめそしちゃう。それでも明日が来てしまうなら。

 この本は、私と一緒に今日を超えてくれる、超最強のおともだち。

今井楓(いまい・かえで)
メディアディレクター/文筆家。1995年埼玉県生まれ、米カリフォルニア州育ち。ラジオ番組の制作を行いながら、自らもパーソナリティとして活動。2024年、よはく舎よりエッセイ集『九階のオバケとラジオと文学』を刊行。よはく舎WEBにてファッションに関するエッセイ「Fashion Thoughts」を連載中。